“今日を超える歓び”を支える、ヒューマンクレストの品質力。

カシオ計算機株式会社
開発本部 品質統轄部 品質企画部 部長
阿部 貴俊様

  • 対応力、カスタマイズ性の高さ
  • テストセンター
  • Lynx
  • QAコンサルティング
  • QAチーム立ち上げ支援
  • テストプロセス改善
  • メーカー
公開日:
2025年6月18日

1957年の創業以来、「創造貢献」の理念のもと、革新的な製品を世に送り出してきたカシオ計算機株式会社。電卓、電子辞書、腕時計など、人々の生活を豊かにする多彩な製品群は、世界中で高い評価を得ています。弊社との取り組みについて、全製品のソフトウェアの責任者である阿部様にお話を伺いました。

ユーザビリティ調査による課題の可視化

以前からカシオ計算機に品質保証を担う部署はありましたが、ほとんどが耐久性などハードウェアに関する業務で、一部ソフトウェアも見ているといった状態でした。そこから切り出す形で、ソフトウェアの品質を専門に扱う「ソフト保証室」として5名程度の小さな部署が2017年に新設され、課長に任命されました。

私自身はそれまで電子辞書の開発や商品企画など、開発工程の上流側でキャリアを積んできたため、私としても大きな転換期で、どこから手を付けたらよいのか、模索している状況でした。

外部の専門家に相談する必要があると感じ、数社にお話を聞きましたが、サービス紹介ではなく何に困っているかのヒアリングからスタートしたのがヒューマンクレストでした。
まだ具体的にやりたいことが決まっているわけではなく、何をしようか思案している段階だったので、こちら側の立場に立って、困っていることに対してお助けしますという親身に寄り添う姿勢に共感し、ヒューマンクレストにお願いすることを決めました。

顧客満足度を上げることが最終的なゴールと考えており、まずはお客様が製品をどのように使用し、どのような問題に直面しているのかを定量的に把握したいという思いから、ユーザー調査の実施をお願いすることとなりました。

最初にお願いしたのは、電子辞書でした。
ユーザーが実際に使う様子を記録・分析いただき、その結果を開発部門にフィードバックすることで、次期製品の仕様改善に役立てることができましたし、課題を可視化することができました。

2025年2月現在、新規モデルの開発は中止となっている電子辞書。少子化による市場規模縮小、スマートフォン・タブレット普及による電子辞書の需要の減少を見越し、辞書機能も搭載したICT学習アプリ「ClassPad.net」を開発し、シェア拡大を進められています。電子辞書から始まった弊社の支援ですが、現在もClassPad.netをご支援しております
弊社田原と阿部様

ソフトウェアテストの網羅性向上から教育まで

やりたいこと、困っていることが具体的に見えてくるようになった中で、田原様とのフリーディスカッションのような形でいろいろとご相談させていただき、楽器品目においても、支援いただくこととなりました。
楽器品目では、アドホックテストが中心だったため、現状を分析していただき、テスト項目作成、テスト実施までを支援いただき、テストの網羅性を向上させることができました。

そのほかに、教育面でもご支援いただきました。
前提として、当社では、基本的にテストの実行は開発側がおこない、全体のプロセスやテスト項目を検証して品質の妥当性を審査することが品質保証側の仕事となっています。
ただ、テストのボリューム・テスト項目・テスト計画の適切さを考えるうえで、品質保証側もJSTQBを学ぶことが重要だと感じ、ヒューマンクレストに勉強会を開催いただいて、実際に社員数名が合格に至りました。
テストにおいて必要な考え方をご指導いただいたことで、開発側で行うテストの適切さをしっかりと検証できるようになりました。

CASIO WATCHESへのLynx導入

スマートウォッチのような心拍や活動量計測ができて、G-SHOCKのタフさをもたせた時計の新規開発がスタートした際、机上のテストはできていたものの、フィールドテストが十分ではないのではという課題を感じていました。
そこでヒューマンクレストに依頼をおこない、走ったり、泳いだり、山に登ったり、利用シーンをシナリオ化して、実際にフィールドテストをしていただきました。
この時計は「CASIO WATCHES」というスマートフォンアプリと常時ペアリングされるものですが、このアプリと接続できる時計は80機種以上もあり、今後も新機種と接続していくものとなります。

接続できる機種が増えていく中で、当然新機種との接続に関しては開発側でしっかりとテストを行いますが、過去の機種に対するテストがおろそかになりがちという課題があり、ヒューマンクレストのリグレッションテスト自動化サービス Lynxを導入することとなりました。

Lynxでは、スマートフォンと時計の接続テストをしながらサーバー側ともテストをするという複合的なテスト環境を構築していただいています。
新機種リリース前の段階で過去機種に影響が出た部分を発見していただいたこともありますし、リリース後の本番環境における調査も品質の安定化に役立っています。

また、Lynxを導入したことで、全体の約15%となる140項目の手動テストを減らすことができるようになり、半期で6件、市場に出る前にバグを発見いただきました。
世界中で約330万ユーザー、MAUは約50万となる当社の主力品目である時計においては、1件のバグであっても、市場に対するインパクトは大きいと感じています。

現在は代表的な機種に絞ってLynxを導入しているので、今後はさらに機種のカバレッジを増やしていきたいと考えています。

初台本社のショールームにて、G-SHOCKのコレクションをご紹介いただきました
“時間は1秒1秒の足し算である”という発想から生まれ、2024年に50周年を迎えたカシオウォッチ

密な連携とフォロー

これまでさまざまな支援をいただいた中でも、ヒューマンクレストに対して一番大きな価値を感じているのは、連携とフォローの手厚さです。
単にテストを依頼して結果をいただくといったやり取りではなく、テストシナリオの作成、テスト項目作成、開発側との折衝、結果の集計などにおいて、密な連携をしていただき、しっかりとフォローいただけていると感じています。
そういった部分が最も満足を感じるポイントとなっています。

ソフトウェア品質の重要性を社内に浸透させ、プライオリティを高めたい

カシオ計算機では現在、ハードウェアからソフトウェアへ期待が高まっており、「モノからコトへ」、お客様へ体験する価値を提供していかなければならないと感じています。
一方で、会社全体として課題感を持っているものの、具体的にどうしていくべきかについては定まっていない部分があるため、ソフトウェア品質に携わってきた人間として、ソフトウェア品質の重要性を周知し、当社の中でのプライオリティを高めていきたいと思っています。
具体的には、ルールの整備や、CASIO WATCHES以外への自動テストの導入、数値でのソフトウェアの品質の見える化をおこない、経営陣に働きかけていきたいと考えています。
また、セキュリティ関係やAIなど変化が激しい中で、業界の動向・トレンドをキャッチし、テストの考え方、品質の考え方を模索する中で、ヒューマンクレストにはコンサルティングの形での支援もお願いしたいと考えています。

阿部様にホスト役をしていただき、弊社代表の渡辺もご招待いただいたカシオワールドオープン。「大変喜んでいただくことができ、これまでのご恩を返せたようで、私としても嬉しかったです」とお話しいただきました
世界初の小型純電気式計算機14-Aに続いて開発した技術用リレー計算機「14-B」。官庁・大学などの技術部門がこぞって採用していたとのこと
日本よりも海外で多く使われている関数電卓。100ヵ国以上で使用され、授業・試験で利用可能なものとして各国の教育機関に認可されています。

「驚きを身近にする力で、ひとりひとりに今日を超える歓びを。」というパーパスを策定され、急激に変化する時代においても、イノベーションを一般に普及させることを目指されているカシオ計算機株式会社。
今後も、自動テストの拡大やQAコンサルティングなどを通じ、ヒューマンクレストはカシオ計算機様を支援してまいります。

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